見上げる空は、ただ蒼く
=口無し事件=

奏君と知り合ってから、
3年が経った。

驚いたことに私と奏君は同じ
小学校だということが
分かって、それからは2人で
一緒に学校へ通っている。

ぴーんぽーん。

インターホンが軽やかな音を
ならして誰かが来たことを告げた。

「はぁい。」

モニター越しに声をかける。

「早く開けなさい!なんで
鍵かけてるのよ鬱陶しい。
融通の聞かない子の癖にそんな
ところはきちんとしてるのね。」

「......っ。」

お母さんだ。
私は身体が震えるのを必死で
抑えながら急いでドアを開けた。

「おかえりなさい、お母さん。」

「そこ邪魔。」

もう、私にただいま!って
笑顔で言ってくれるお母さんは
いないんだ。

なんども言い聞かせているけど、
やっぱり寂しくなる。
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