見上げる空は、ただ蒼く
私のお母さんはあの人だ。
紗綾さんじゃない。
そんな考えに捕らわれていて
未だに紗綾さんのことを
お母さんと呼べないでいた。

「ま、ゆっくりでいいじゃん。
結乃の好きにすればいいよ。」

奏がふっとその場を和やかに
して、私たちは笑顔に戻った。

3人でリビングに入ると、
私たちはテーブルに座った。

義父である透さんは、
仕事でまだ帰ってきていない。
海外出張でオーストラリアに
いるみたいだ。

「お父さんは海外にいるし、
3人で食べちゃおうか、
結乃ちゃん、たくさん食べてね。」

退院してすぐだし、まだ身体は
思うように動かない部分もあるけれど、
なによりもこのあったかい
家に帰ってくることが出来たという
事実が1番嬉しかった。

ケーキを綺麗に3等分して、
何気ない会話をしながら食べる。
この時間が、大好きだ。
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