見上げる空は、ただ蒼く
お母さんが飲酒に溺れる前は、
誕生日の日にいつもケーキを
焼いてくれてたっけ。

お母さんの作る、物凄く甘い
バタークリームケーキ。

料理が苦手であまり積極的に
料理しないお母さんだったけど、
毎年の誕生日の日だけは私が
学校に行っている時間を使って
一生懸命ケーキを焼いてくれた。

『ねぇお母さん、やっぱり
このケーキ甘すぎるってば。』

『えぇ、そうかなぁ。お母さん
ちゃんとレシピ通りに作ったはず
なんだけどな。』

なんて笑いながら。

あの頃はお父さんもいて。
本当に幸せで。
毎日が光り輝いていた。

「あの味、好きだったな......。」

呟くと、紗綾さんがふっと
遠くを見るような表情になった。
その横顔は憂いを帯びていて、
感情を読み取ることが出来ない。

「母さん、どうかしたの。」

奏が声をかけると紗綾さんは
ハッとして元のにこやかな表情に戻った。

「大丈夫、なんでもないよ。」
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