見上げる空は、ただ蒼く
うつむいてただひたすら
泣いていると、少しして
遠慮がちに頭の上にぽんと
手がのせられた。

「大丈夫、大丈夫。」

耳に心地よいテノールの声。
私の頭上に乗せられた手は
何度か私の頭上を往復した。
それから、そのまま頭をぐいと
引き寄せられる。

突然の出来事に正座だった私は
バランスを崩して、奏の胸に
すっぽりと収まるような体勢に
なってしまう。

「結乃のせいじゃない。結乃は
自分を責める必要なんてないよ。
これは凜の問題だ。きっと凜が
自分と向き合う良い機会になる
だろうって俺は信じてる。」

「奏......私、怖いの。いつも、
自分は知らず知らずのうちに
相手を傷つけてしまってる。

原因が分かればやめるのに
その原因さえ分かんない。
私と関わってたらきっと奏も傷つく。
離れた方がいいんじゃないの?」

小さな声で言うと、奏は少しだけ
驚いたような表情を見せて、
それからすぐに真剣な顔に戻った。
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