あなたのこと、好きだけど。
「あ、その詩人良いよな。」
私が呼んでいた本に気がついて、先生はタバコを灰皿に押し付けた。
そして持っていた缶コーヒーを一口飲んでから、たんたんと話始めた。
「その人の詩ってさ、悲しい。愛する。生きる。とかいうキーワードが多いんだよ。なんか深いっつーかさ、考えさせられるっつーかさ、面白いよな、それ。」
さすが国語の先生だけであって、よく分かってる。
この人が書いている詩の中で特に好きなのは愛というワードだった。
叶わない恋をしてきたのか知らないが、詩の中の恋はいつも叶わないままだった。
虚しいままだった。