千年愛歌
「中身はどんなものなの?」

隣の席の人が訊ねる。かぐやさんは、閉じた本を開くことなく暗記した文を言い始めた。

「つれづれなるままに、日暮らし、硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」

相変わらずきれいな読みに、俺たちは騒ぐのをやめ、かぐやさんの言葉に耳を傾ける。気がつけばバスの中は静かになっていた。

「孤独にあるのにまかせて、一日中、硯に向かって、心に浮かんでは消える他愛のない事柄を、とりとめもなく書きつけてみると、妙におかしな気分になってくる。という意味です」

パチパチと誰かが拍手を送り、それはバスの中全体に広がっていく。

かぐやさんは恥ずかしそうにはにかんだ。俺はその笑顔にまた、胸を高鳴らせる。



徒然草の話をしているうちに、二条城に着いた。鶯張りの廊下が有名な場所だ。

二条城を見た後は、金閣寺と銀閣寺を見に行き、俺たちが楽しみにしていた自由行動の時間が訪れる。

「清水寺行こう!」

友達にそう声をかけ、お土産屋が並ぶ道を歩いていく。
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