千年愛歌
意味は、山里は、冬には一段と寂しくなるものだなあ。人も来なくなり、草も枯れてしまうと思うので。

……俺、こんな風に思われてんのか!?絶対これふざけて書いてるだろ!!

苦笑しながら俺が歌が書かれた紙をかばんに入れると、「沖田くん」と声をかけられた。もう誰かはわかっている。

「かぐやさん」

顔を赤くしたかぐやさんが横にいた。嬉しくて心臓が音を何度も立てる。

「沖田くんは、誰かに紙を渡したんですか?」

「ううん、まだだよ」

夕焼けが照らす教室。二人きりの空間は、どこか落ち着かない。

かぐやさんは、俺の机の上にそっと紙を置いた。百人一首が書かれている。

「これが……私の気持ちです……」

恥ずかしそうに、かぐやさんは俺から顔をそらす。俺は紙を見た。

「陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆえに 乱れそめにし われならなくに」

その意味は……私の心は乱れ乱れています。あなたのせいで。

俺の胸がますます高鳴り、慌ててかぐやさんを見つめる。かぐやさんはいつものように微笑んでいて、でも顔は赤くてとてもかわいい。
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