千年愛歌
きれいな声で、かぐやさんは枕草子を読んだ。その発音などに、クラスメートたちは魅了されていく。俺もきっとその一人。でも、俺たちが混じり合うことはきっとないんだ。

「海炎!このモンスター強すぎ!」

「へへへ!俺、そこのステージクリアした〜!!」

「ええ〜!攻略法教えるよ〜」

俺たちが馬鹿みたいに休み時間にゲームで盛り上がっている時、かぐやさんはゆったりと静かに読書をする。

時間の流れも、過ごし方も、過ぎ去っていく季節さえも、同じ教室にいるのに違う気がしたから…。



かぐやさんと話すことがないまま、一学期は終わろうとしていた。

「明日から夏休みだ〜!」

「海行こうぜ〜!海!」

そんなことを友達と話しながら廊下を歩く。その時、かばんの中に図書室で借りっぱなしの本が入っているのに俺は気づいた。

「悪りぃ!ちょっと本返してくるわ!忘れてた」

俺がそう言うと、友達は「十秒で戻ってこいよ〜。じゃなきゃ、ジュース奢ってもらうからな〜」とふざけて言う。

「無理だろそれ!ていうか、奢らねえよ!」

俺はそう言いながら、図書室へと急いだ。
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