千年愛歌
図書室に入ると、かぐやさんがいた!教室にいる時と同じように、カバーの掛けられた本を静かに読んでいる。

俺は教室にいる時のように騒がないよう、返却ボックスの中に本を返した。借りた本は、司書さんがいない時には返却ボックスというところに返す。今日は司書さんがいない。

夏休み中に読む本を何か借りようかな、と思っていたその時、カタンと小さな物音がし、反射的にそちらを見る。かぐやさんが立ち上がり、本棚に歩いていくところだった。

好きというわけでも、特別なファンというわけでもないけど、かぐやさんはきれいな人だと思う。大和撫子ってやつだ、きっと。

俺はバスケがテーマの小説を手に取り、貸し出しカードに名前と学年を書いて机の上に置いた。そして帰ろうとしたのだが、「どうしよう…」と小さな声が聞こえ、またかぐやさんの方を向いた。

かぐやさんは一冊の本を取ろうとしているのだが、身長が低いためか、届かないようだ。周りには脚立などもない。

俺は勇気を出して、かぐやさんに近寄った。
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