先輩と二人だけのあまい時間
嫌がってるようには見えない先輩の後ろ姿に足を止めてしまう。



彼女、だよね。




カイロをポケットの上から触る。



先輩の分と自分の分。
2個入れてきたのにな。



今、私から先輩に話しかけたら修羅場になっちゃう。
どうせ、先輩の目の前を通るんだ。
先輩も私に気づくだろうし、いざこざにもならない。



止めていた足を動かして、先輩の前を通る。
なんも気にしてない顔を作って。
横目でチラリと先輩を見て。



通ったけど先輩は、声を掛けてくれなかった。
目が合ったはずなのに。



あのチョコレートブラウンの瞳に、私が映ってたはずだったのに。



さっきとは違う。
焦燥感に駆られて、早歩きになる。
気づいたら、走ってた。



夢は夢のまま。
いい夢が続く訳なんてなかったんだ。



教室に駆け込んで、ポケットから暖かいカイロを取り出してゴミ箱に捨てる。



何も考えたくなくて、机に突っ伏す。
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