Reality~偽りの歌姫~《完》
ジュリアのマネージャーに連絡してから、俺も寮を飛び出した。



ジュリアの左手の傷は、芸能界で成功してからは増えていない。

けれど、デビュー前は精神的に不安定になるとカッターに手を伸ばす癖があった。

リストバンドに隠された傷が増えないように祈っていた時期もあったが、最近はその癖も見られなくなり安心していた。



さっきのメッセージを思い出すと、カッターを握りしめるジュリアの姿が目に浮かんでしまう。



不吉な思いを断ち切って、俺は車を飛ばした。
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