Reality~偽りの歌姫~《完》
「遼、勝手に入ってくるな!」

上半身裸になっていた麗は、慌ててタオルで体を隠した。

その姿を見た時、一瞬ためらいを感じた。

けれど、これ以上馬鹿げた芝居を続ける気はない。



一呼吸置いてから、台所に足を踏み入れる。

「前から……おかしいと思ってた」

麗から視線をそらすことなく、後ろ手に扉を閉めた。



「どうして今まで隠していた?」

一歩ずつ、麗との距離を詰めていく。

俺が麗の前まで歩み寄ると、あいつは体を隠しているタオルを握りしめ後ずさりした。

「何のことだよ……」



「俺が気づいてないとでも思ってたのか?」

壁際まで追いつめられた麗は、その言葉に顔を上げた。



「お前の音域は、男のものと思えない」
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