Reality~偽りの歌姫~《完》
「遼……離してっ……」

突然の出来事に、俺の手から逃れようとする麗。



「お前が辞める必要はない」

もう麗を離さない。

こいつを一人で泣かせたりはしない。

思いを込めて、さらに強く麗を抱きしめた。



「桜井社長がお前を辞めさせるんだったら、俺はStreamを解散する」

その言葉に、必死で抵抗していた麗の手が止まる。

涙があふれそうな目で、俺を見上げた。



「遼……、俺は……」

そこまで言うと、麗は肩を震わせて泣き出した。



「こんな華奢(きゃしゃ)な体で男のフリなんかしやがって」

俺の腕のなかで涙を流す麗の頭にそっと手を乗せた。
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