Reality~偽りの歌姫~《完》
芸能人がステージに立っているというだけで、物珍しそうに眺める通行人。

俺達四人を交互に指さす女子高生。

どうせ無名の新人だろうと冷ややかな目で素通りするスーツ姿のサラリーマン。



ある時、それまでなんとなくステージを眺めていた観客の視線が一点に集中した。



ソロで歌う麗の姿……

さっきまで舞台裏で震えていたとは思えない。

もともと実力がある奴だが、ステージでは普段以上の集中力を見せている。



こいつの歌声には、なぜか余裕が感じられない。

アンバランスな精神状態が現れているからだろうか。



ルックスもダンスも歌唱力も安定感があるのに……

麗の存在自体がどこか危うい。



男になりきろうと…

隙を見せまいと……

強がれば強がるほど、あいつの弱さがにじみ出てしまう。



このアンバランスな魅力があるからこそ、大勢の観客が()きつけられるのだろうか。
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