バレンタイン・ストーリーズ
夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』後日談

本編↓
https://www.no-ichigo.jp/read/book/book_id/1366049



放課後、いつものように青磁と一緒に旧館の美術室へ向かう。

でも、いつもとは違うことが一つだけあった。
それは、今日はバレンタインデーだということ。
だから、私の鞄の中には、彼にあげるために持ってきたチョコレートが入っている。

実はぎりぎりまで、青磁にチョコをあげるかどうか悩んでいたのだ。

今まで恋愛に興味がなかった私は、もちろんお父さんと友達以外にはチョコをあげたことがなかった。
付き合っているからには、もちろん相手にバレンタインチョコをあげるのは当然のことだろうと思ったけれど、なんせ相手は変わり者の青磁だ。

クリスマスだとか記念日だとかのイベントに全く興味のない青磁は、もしかしたらバレンタインの日付も認識していないかもしれない。
そんな彼にチョコを渡すのは、かなり勇気がいった。

何も言わずに渡さずにスルーしようかな…という考えもよぎっていたくらいなので、クラスでいちばん仲のいい親友の沙耶香が、

「茜、青磁にチョコあげるんでしょ? 一緒に作ろうよ」

と声をかけてくれなかったら、本当に用意しなかったかもしれない。

「でも、なんか、チョコとか渡したら変な顔されそう……。あいつ、バレンタインなんて興味なさそうだし」

そう言ってごねる私に、沙耶香は、

「彼女からチョコもらって嬉しくないわけないじゃん! てゆーか、絶対期待してるって! 渡さないとか可哀想だよ~」

と言った。

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