シュガーレス
やたら女子社員のメイク、服装に気合が入って、仕事中も返事一つにいちいちテンションが高いなと感じた朝。あぁ、そうか。今日はクリスマスか。
「福田さん今日のご予定は?」
先日トイレですれ違った際に堤さんをランチに誘ったとはしゃいでいた後輩だ。届いたサンプル品のチェックを一緒にやっている途中で問いかけられる。
「私は、特になにも」
笑顔で大人の対応。語尾にどうせ一人なんでしょ? と言いたげな雰囲気が伝わってきたが痛くもかゆくもない。
「またまたぁ。福田さんキレイだもん。ほんとのこと言ってくださいよぉ」
「ほんとのことだよ?」
「ふふ、クールなところがまたいいんだけど。憧れます」
堤さんとパートナーを組むようになってから妬まれることが多くなった。私と堤さんの間に恋愛感情はないと確信しながら牽制をかけてくる。仕事中は他の誰よりも長く堤さんと過ごす私が気になるし、気に入らないのだろう。きっと彼女も。
「私今日堤さんを誘ってみたんです。二人きりじゃないけど……でも最後は二人きりになれるようにがんばります」
「そう、頑張ってね」
「応援しててくださいね!」
お互いに心の内とは違うことを平気な顔をして言い合う。気持ちが悪い。
「ありがとう。あとは私がやるから。仕事に戻っていいよ」
「いいんですか? じゃあ、お願いします!」
積まれたダンボールに手をついて小さく息をつく。
「どうした? 風邪、ぶり返した?」
「……いえ」
あの女子社員と会話をした後に、今正直一番顔を見たくない相手が通りがかる。事務所入り口横で作業していれば声をかけない方が不自然か。
「あんまり無理するなよ」と当たり障りのない言葉を一言残して去って行く。
そういえばここ数日会社の外で会っていないな。風邪気味だった私に気を遣った? いや、まさか。気乗りがしないと断っても私の意志など関係なく自分の欲を満たそうとする自己中男にそんな気遣いが出来るわけないよね。
ふうと再び出た小さな溜息は無意識。なんなんだろう、このなんとも言えない心にモヤがかかったような息苦しさ。とっくに風邪なんて完治しているけど、やっぱりまだ本調子じゃないのかな。
「福田さん今日のご予定は?」
先日トイレですれ違った際に堤さんをランチに誘ったとはしゃいでいた後輩だ。届いたサンプル品のチェックを一緒にやっている途中で問いかけられる。
「私は、特になにも」
笑顔で大人の対応。語尾にどうせ一人なんでしょ? と言いたげな雰囲気が伝わってきたが痛くもかゆくもない。
「またまたぁ。福田さんキレイだもん。ほんとのこと言ってくださいよぉ」
「ほんとのことだよ?」
「ふふ、クールなところがまたいいんだけど。憧れます」
堤さんとパートナーを組むようになってから妬まれることが多くなった。私と堤さんの間に恋愛感情はないと確信しながら牽制をかけてくる。仕事中は他の誰よりも長く堤さんと過ごす私が気になるし、気に入らないのだろう。きっと彼女も。
「私今日堤さんを誘ってみたんです。二人きりじゃないけど……でも最後は二人きりになれるようにがんばります」
「そう、頑張ってね」
「応援しててくださいね!」
お互いに心の内とは違うことを平気な顔をして言い合う。気持ちが悪い。
「ありがとう。あとは私がやるから。仕事に戻っていいよ」
「いいんですか? じゃあ、お願いします!」
積まれたダンボールに手をついて小さく息をつく。
「どうした? 風邪、ぶり返した?」
「……いえ」
あの女子社員と会話をした後に、今正直一番顔を見たくない相手が通りがかる。事務所入り口横で作業していれば声をかけない方が不自然か。
「あんまり無理するなよ」と当たり障りのない言葉を一言残して去って行く。
そういえばここ数日会社の外で会っていないな。風邪気味だった私に気を遣った? いや、まさか。気乗りがしないと断っても私の意志など関係なく自分の欲を満たそうとする自己中男にそんな気遣いが出来るわけないよね。
ふうと再び出た小さな溜息は無意識。なんなんだろう、このなんとも言えない心にモヤがかかったような息苦しさ。とっくに風邪なんて完治しているけど、やっぱりまだ本調子じゃないのかな。