シュガーレス
一時間ほどの残業をして真っ直ぐに家に帰る。街はいつもより賑わい、サンタクロースの格好をしてケーキを売る販売員を目にしてようやくクリスマスを実感した。
部屋に着き明かりを点ける。部屋の中はだいぶ片付いた。あとは部屋の隅にまとめてあるダンボールを処分するだけだ。
お腹が空いたなと思ってはっとする。しまった、買い物をしてこないと何もないんだった。これからまたすぐに出かけるのはなんだか気乗りがしない。空腹を感じながらもまずは一服しようと熱いお茶を入れて部屋の真ん中に座った。
温かいお茶を飲んでほっとした気持ちにふぅと一息つく。なんだか今日はため息をついてばかりだ。マグカップをテーブルの上に置いてホットカーペットの上に寝転がる。目を閉じたらすっと引き込まれるように眠りについた。
夢を見た。中学の時の制服に身をまとった自分が泣きながら母親に何かを訴えている。でも自分の望んだ答えは返ってこなかったんだ。
『お願い、実希子ちゃん。そのことは内緒にしておこう?』
『そんなことよりほら、クリスマスのプレゼントは何が欲しいの?』
『何でも好きなものをお父さんに買ってもらえるわよ』
優しい表情も口調も声も私の好きだった母そのものだったけど、この日を境に、唯一の肉親である母から心を閉ざした。
「プレゼントなんかいらない……」
自分の寝言の声に反応して目を開ける。
時計を確認する。30分ほど眠ってしまっていたらしい。重い身体をゆっくりと起こす。
久々に嫌な夢を見た。目じりに滲んだ涙を拭う。泣いてんじゃん、自分。
そうか、あの日もクリスマス……
止めよう。自らわざわざ気分を害してどうする。もっと他のことを考えよう。去年のクリスマスは何をしていたっけ。
……そうだ、去年は堤さんと一緒に居た。
まだただの先輩と後輩の仲で、仕事帰りに10人くらいで飲みに行って帰りに二人きりになった。
30分くらいの時間だったけど、酔っぱらっていた私は、ベラベラと自分の家庭の事情や家族のことを堤さんに打ち明けていた。
次の日酷く後悔したけど、顔を合わせてもいつもとなんら態度の変わらない堤さんを見て勝手に距離が縮まったものだと勘違いをしていた。
……気分を変えるつもりが、さらに気分が悪くなった。
「私今日堤さんを誘ってみたんです。二人きりじゃないけど……でも最後は二人きりになれるようにがんばります」。
昼間の後輩の言葉を思い出してまたさらになんともいえない嫌な気持ちになって、じっとしていられなくなって立ち上がった。お腹が空いた、コンビニにでも行こう。
部屋に着き明かりを点ける。部屋の中はだいぶ片付いた。あとは部屋の隅にまとめてあるダンボールを処分するだけだ。
お腹が空いたなと思ってはっとする。しまった、買い物をしてこないと何もないんだった。これからまたすぐに出かけるのはなんだか気乗りがしない。空腹を感じながらもまずは一服しようと熱いお茶を入れて部屋の真ん中に座った。
温かいお茶を飲んでほっとした気持ちにふぅと一息つく。なんだか今日はため息をついてばかりだ。マグカップをテーブルの上に置いてホットカーペットの上に寝転がる。目を閉じたらすっと引き込まれるように眠りについた。
夢を見た。中学の時の制服に身をまとった自分が泣きながら母親に何かを訴えている。でも自分の望んだ答えは返ってこなかったんだ。
『お願い、実希子ちゃん。そのことは内緒にしておこう?』
『そんなことよりほら、クリスマスのプレゼントは何が欲しいの?』
『何でも好きなものをお父さんに買ってもらえるわよ』
優しい表情も口調も声も私の好きだった母そのものだったけど、この日を境に、唯一の肉親である母から心を閉ざした。
「プレゼントなんかいらない……」
自分の寝言の声に反応して目を開ける。
時計を確認する。30分ほど眠ってしまっていたらしい。重い身体をゆっくりと起こす。
久々に嫌な夢を見た。目じりに滲んだ涙を拭う。泣いてんじゃん、自分。
そうか、あの日もクリスマス……
止めよう。自らわざわざ気分を害してどうする。もっと他のことを考えよう。去年のクリスマスは何をしていたっけ。
……そうだ、去年は堤さんと一緒に居た。
まだただの先輩と後輩の仲で、仕事帰りに10人くらいで飲みに行って帰りに二人きりになった。
30分くらいの時間だったけど、酔っぱらっていた私は、ベラベラと自分の家庭の事情や家族のことを堤さんに打ち明けていた。
次の日酷く後悔したけど、顔を合わせてもいつもとなんら態度の変わらない堤さんを見て勝手に距離が縮まったものだと勘違いをしていた。
……気分を変えるつもりが、さらに気分が悪くなった。
「私今日堤さんを誘ってみたんです。二人きりじゃないけど……でも最後は二人きりになれるようにがんばります」。
昼間の後輩の言葉を思い出してまたさらになんともいえない嫌な気持ちになって、じっとしていられなくなって立ち上がった。お腹が空いた、コンビニにでも行こう。