シュガーレス
 徒歩五分ほど。早足で自宅近くのコンビニに着いたとき、わずかに息が上がっていた。
 店内をぐるりと見て回り、サラダを手に取ってレジへ行く。メインはおでん。種類の違う四つの具を選んで店員に注文した。
 おでんを包んでもらう間ぼーっと店内や、外の様子を見ていた。
 店内には雑誌を立ち読みする中年の男性、会社帰りのOL。店員は二名。外には通行人の姿がちらほらと見える。
 家に帰れば一人きり。外に出れば他人であろうが誰か必ず人がいて。他人の存在に少しの安心感を覚えている自分が馬鹿らしくて俯いた。可笑しかった。
「お待たせしました」
 店員の呼びかけに会計を済ませてコンビニを出る。
 自動ドアですれ違った人物に「福田さん?」と声をかけられ立ち止まる。
「に、仁科さん!?」
 思わず声を上げる。不思議な巡り合せはまだ続いているのか。喫茶店、病院と続き、近所のコンビニでもばったりと顔を合わせてしまった。
「こんなところで何を?」
「何って……夕飯の調達に」
 仁科さんはわずかに柔らかな表情を見せると「同じだ」と言った。私もつられて愛想笑い。
「よかったら、この後予定がなければ少し、お話しませんか」
 思わぬ誘い。
 いつもだったら断るのだろうけど、二つ返事で首を縦に振る。もう少しだけ彼の誘いが遅かったら、自分から同じように声を掛けていたから。
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