涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。

奏なら





カタンッ……コロコロ


一時間目が始まってすぐ。

なにかが床に落ちて、転がる音がした。

見ると、淡い水色のシャーペンが、空の机の横でとまっている。


場所的に隣の席の……


シャーペンを拾いあげて、ちらっと隣に目をやった。



「……」



……まじか


まだ授業始まってから1分も経ってないですけど。

頬杖をついて目を閉じる隣人は、シャーペンを持っていたなごりなのか、手の形がそのままだ。

ちょっとした好奇心がわいた。


そーっと……そーっと……よしっ


起こすことなく、無事にシャーペンを手に持たすことができて、ほっとする。

謎の達成感を味わいながら、伏せられた長いまつげについ目がいった。


……きれい


人を見てきれいだなんて、今まで思ったことがない。

今目を開けたらどうしよう、なんてドキドキしてる自分こそ恥ずかしくなって目を逸らした。


もし横にいるのが奏なら、迷うことなく顔に落書きしてるけど。


……いまごろ奏は口あけて寝てるかな


頭に浮かんだ間抜けな顔に、ふっと笑みが漏れた。

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