涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


「ふん、ふふん」


なんでだろう。奏がいないのに学校行くのが嫌じゃない。心が軽い。

これもりょうたのおかげかな。


「いってきます」


誰も居ない家に声を掛けていつもより少し早く学校に向かった。


「そらちゃーーんっ!」


もうすぐ学校に着くという時。どこからか聞こえてくる声に振り向くと、満面の笑顔のりょうたがこっちに手を振りながら走ってくる。

ゴールデンレトリバーみたいだ。


「朝会ったの初めてだね!」


朝から明るい笑顔を向けられ、太陽と相まって眩しい。


「う、うんそうだね」
「一緒に行ってもいい?」
「うん」


驚いたけど正直うれしい。


「朝から会えてラッキー」


ドキッ

聞き間違いかと思ってぱっと見上げるとりょうたがにっと笑っていてまた胸が高鳴る。

……りょうたも、思ってたんだ


喜びを噛み締めたのも束の間、りょうたは校門に入ると友人に囲まれて、校舎を歩いても先輩や後輩や同級生みんなに話しかけられて、結局りょうたは口パクで「ごめんね」と言って空は先に教室に行くことになった。

やっぱり人気者だ。

ひとりで教室に行き、席に座る。でもあれ、なんだろう。いつもより視線を感じる気がする。

いつもよりもっと嫌で重たい感じ。


< 105 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop