涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


「たまたま会ったから俺が一緒にいこってさそっただけ」


周りがどれだけ騒ごうが、りょうたは涼しい顔のまま答えるだけだった。


「それに俺、彼女できてもバスケの時間は削らない主義」


その一言だけ少し怒った声で、周りは気づいていないけれどわたしには分かる。

それだけバスケに真剣なんだ。


「なんだよー、みんな俺をチャラいナンパ男みたいな目で見てきてさぁー」


でもそれ以外は違う。


「先生ーー、可愛い生徒がクラスメイトからいじられてるのに見てるだけじゃなくて助けてくださいよ」

「あーごめんごめんそういうキャラなのかと思って」


――怒っていない、を演じている。


笑っているけれどすごく静かに怒っている。

自由な人なんだと思っていた。

空に自由をくれたから。

でもそうじゃない。

この人が自由なんじゃなくて、

岸の周りにいる人たちが自由でいられるんだ。

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