涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


奏は「ごちそうさまでした」と手を合わせて、食器をシンクへ運ぶ。

今すぐ呼び留めたい気持ちを、ぐーっと堪えた。

自分で言い出したくせに、やっぱりできないなんて言いたくない。こうなったらもうやるっきゃない…!

でもせめてなにか……頑張れるご褒美があればなぁ


「ねぇ奏、できたらなんかご褒美ちょーだいよ」
「……やだ、自分で言いだしたんだろ」
「ええぇ」
「たとえば何」
「たとえば……あっプリン!いつもひとつだから、ご褒美にふたつとか!!」


奏のもとへ駆け寄り、指を二本たてて見せる。

プリンふたつ食いなんて贅沢な夢。

これなら頑張れそう。


「まぁ……いいけど」

「よっしゃあ」

「空……おれ、言いたいことある」


とつぜん深刻そうに目を伏せる奏を見てプリンなんかどっか飛んでった。

なんか今日ずっと元気はすこしないなって思ってたけどどうしたんだろう


「なに急に……どしたの……」


どこか行っちゃうとか?

引っ越しするの?

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