涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。

「りょうた……っ」


急かすように予鈴のチャイムが鳴る。

いつだって逆らえないそれに、いまは離すもんかとむきになる。

さみしい。寂しかった。

空が見えないみたいに、目が合わないのはもうイヤだ。


「っ…りょうた…っぉ、おはよう…っ」


たった4文字で言葉を詰まらせてしまってごめんなさい。

もう少し息が整ったら、今まで言えなかったこと、ちゃんと素直にぜんぶ言うから、がんばるから、だから、


「嫌いに、ならないで……」


――空を嫌わないで


男に媚びてるって、なんだろう。

空はただ、大切な人と一緒にいたいだけなのに。

無愛想でいつも怒ってるって、

言われるたびに傷ついたし、言われなくてもそう思われてるんだって怖くなった。

信じたくても信じきれない。誰のことも。

でも信じたいと思える人に出会った。離したくない。

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