涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。



……抱きしめてくれたりしないかな


なんて思ってしまった自分がうざったい。



「どした?」



ふいに視線がぶつかり、胸がドキリと鳴る。



「…あっ、シャー芯おれちゃったの?こっち使いなよ。これねー、ぜんっぜんおれないよ、ずっとつかってるけど、おれたことない!俺のお気に入りーっ」



…すごい嬉しそうでかわいい



「へー…ありがとう」



ノックカバーの上にピンク色のうさぎがついたシャーペンを受け取った。


いやチョイス可愛すぎるだろ…


男子高校生がこれを気に入ってずっと使ってるの可愛すぎない?



――こんなん、好きになっちゃうじゃん



「それ使いにくかったら言ってね。まだねー…えと、これ!あるから!」



そう言って涼太が取り出したのは、ノックカバーに黒い狼がついたシャーペン。



「これも書きやすい!いっっかいもおれたことない!」



芯が折れないことをぜったい自慢してくるのなんだろう、もう好き。



__かわいいスキ。




「……あとこれは」



ふわりと肩の上になにかが覆いかぶさって驚いた。



「いっかいも使ってないやつだから、ふかふかでしょ?」



淡い空の色をした肩掛けタオル。

手で触れてみると、ほんとうにふかふかだ。

じわじわ温もりに包まれ、なぜか全身があたたかい。



「…なに…これ」



どうしようもなく照れくさくて顔をそらしてしまう。

おまけに素直になれず、意味のない言葉が小さくこぼれた。


隣から柔らかい笑みが聞こえる。

まるで素直になれない自分を受け入れて優しく包み込んでくれるような。



< 128 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop