涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


「電話……ともだち?」


涼太が不思議そうに問いかけてくる。


「ううん幼馴染」
「幼馴染……」
「家族みたいなもん!うるさいやつなんだよこいつ、ごめんねぇ」


いつもの調子で奏をいじってしまい、涼太がもう一度幼馴染かぁと呟く。どこか寂しそうだった。


「いいね、家族みたいな幼馴染」


涼太にもいるじゃん。幼馴染みたいな人が。あのけいってやつと、天使のうさぎちゃん。

そう言いかけて言えなかった。

あまりに寂しそうな顔をするから。


「あっじゃぁ空もう行くねっありがと!」

「こちらこそっ!」

「あっこれも、ありがとう」


立ち上がった時ぱさりと落ちそうになった涼太のジャージを掴み返そうと差し出す。

でも涼太は受け取らなかった。


「……持っていって」

「え?でも、もうだいたい乾いたよ」

「風邪ひいたらやだから」


こんな暑いのに風邪なんか引かないわ、そう言いかけて時間もなかったし、これも涼太の優しさなんだろうなと思ってわかった!と走りながら手を振った。

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