涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。

なんで伝わんねぇのかな



「ごめんかなで〜〜遅くなったぁ〜〜」


走って校門に向かうと、奏がヤンキー座りして待っていて空に気づくと「おう」と小さく呟いた。何も言わずじっとこっちを見ている。やばいこれだいぶ怒ってる。


「ごめんほんとに。プール掃除させられてて、連絡すんの忘れてて、ごめん」

「それはいいけど……なに、それ」

「ああこれ?これね、風邪引くからって涼太が渡してくれて」


なんでそんなの気になんだろ。あっ


「仲直りできたよ!あの涼太と!!私の勝ちだねっ!」

「このジャージ涼太が貸してくれたの!」


つい嬉しかったことを思い出して早口になってしまう。

私の勝ちだねってご褒美のぷりんちょーだいよって笑いかけても、奏は笑わなかった。ただ目を丸くしていて

その後ふっと俯いて、それから不機嫌にそのジャージを掴み取った。


「こっち」


そして変わりに奏のジャージを着させられる。


「なんでっ」

「いいから」

「意味わかんない」


ほぼ強制的に着せられた馴染みのある緑色のジャージがもうすでに懐かしかった。


「これ汗かいたやつ?」

「ちがう体育サボり」

「またサボったの〜?」


他愛もない会話をして歩き始める。

奏がひく自転車のかごに入った涼太のジャージが甘酸っぱい。

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