涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


そうだ…!慌ててでてきたからお金1円も持ってきてないし…!


半ば逃げる勢いでUターンすると、きゅっと手を握られて引き戻される。

いつから見られていたのか、店の前に立つスーツを着た女の人にクスッと笑われてしまった。



「ほら奏のせいで笑われたじゃん…!」



小声で詰め寄ると、奏は目をパァァと輝かせた。



「俺のおごり」

「この店にめーーっちゃくちゃうまいプリンあるんだって」



めーーっちゃくちゃうまいプリン?!?!

それは食べたい!!


…で、でも…



「ね、食べたことあります?」



奏がさっきの女の人に問いかける。


いやいや、なに友達みたいに話してかけてんの?!


女の人は口に手をあてて上品に微笑んだ。



「ありますあります、おいしいですよ」



そのときリンリンと可愛らしい鈴の音が鳴りドアが開く。

先にどうぞどうぞと言われ、流されるままにお店に入った。こんな夜に開いてるお店あるんだ。

ふと目についた幻想的な鏡のなかにうつる自分を見て今すぐ帰りたくなる。

グレーのパーカーに、だぼっとした黒色のズボン。

ふたつとも着つくしてよれている。

なんなら普通にパジャマにしてるやつ。


え、やばい

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