涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


じっとしていられなくて、おしぼりで手を拭いたりしながら、チラチラ奏を盗み見る。

なんかいつもと雰囲気ちがう



「珍しいね、ひとつだけって」



いつも大きくてカラフルなピアスたくさんついてるのに。

だから落ち着かないのかも。



「…決めてたから」

「ん?」

「空とデートするときにこれ、つけようって決めてた」



まただ。



「そ…そぅ…なんだ」



奏の目が、見れない。




「ご注文お決まりですか?」

「「!!」」



顔をあげると、テーブルのすぐそばに店員さんが立っていて驚いた。

まったく気づかなかった。

自分たちの世界に入り込んでいたんだと思うと、ぐーっと恥ずかしさが込み上げてくる。

しどろもどろになりながらお互い好きなものを注文して、店員さんが見えなくなったあと、二人でこっそり笑いあった。

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