涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


ほこりっぽい。


窓を開けようとしたけど、錆びてしまっているのか、かたくて開けることができなかった。

手をあてると、ほんのすこし太陽を感じてあたたかい。

これくらいがちょうどいい。

できれば風にあたりたかったけど、しかたない。



「はぁ……お腹すいた」



一人になると、つい本音が漏れた。


力尽きて腰をおろし、ポケットからケータイとイヤホンを取り出す。

そして奏がよく聞いている音楽をながして目を閉じた。


これ以上、余計なことに気が向かないように。



ーーお腹はすいてるはずなのに、食べる気力がわかない。


たまに置いた物の位置が微妙に変わってたり、プリントがまわってこなかったり。

スリッパを失くしたり、ノートが汚れてたり。

それをぜんぶ呑み込んだら

だんだんなにも要らなくなった。



『空』

『……なに』

『めし食おう』

『……今日は空いいや』

『なんでだよ、ダイエットか』

『……んなわけないでしょ』



なにも知らずに話しかけてくる奏にさえむかついて。

向こうから奏を呼ぶ声がたくさん聞こえる。

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