涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
ん?……だれかいる?
立ち止まって視線を巡らせる。
すると、右側の一番手前の空き教室に、人の姿が見えた。
驚いたな。
今までだれとも会わなかったのに。
窓側の壁に背をつけて、だらんと力が抜けたように床に座っている。
薄茶色のボブに、雪のように白い肌。
出会った時から、緊張で強張った表情しか見てなかったから、初めは気が付かなかった。
「……青笑さん」
動けずに立ち尽くしていると、青笑さんの頬がきらりと光った。
「あ……」
……さみしい
「おい涼太?なにしてんだよ」
前を歩く親友に呼び戻されて、はっとする。
「なに?そこに誰かいんの?」
けーちゃんが歩み寄ろうとするから、慌てて俺のほうから駆け寄った。
青笑さんはたぶん、ひとりになりたかったんだと思うから。
寂しいけど、でもひとりになりたい。
わかるから。
分かる気がしたから。
俺が空を見あげるそれと、似ている気がしたから。
「なんでもない、いこ」
歩き出さずに、じっと見据えられてまごつく。
俺がなにか言葉をのみこんだこと、たぶん分かるんだと思う。