涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
ほっとけばいいのに、俺のことなんか。
もう中学生の頃とは違う。
けーちゃんはもう、俺がいなくても
「大丈夫だよ」
不安そうな顔をするから、肩をぐっと抱き寄せてやった。
俺の方がまだ身長高いもんね。
「ほーら行くよ」
頭をわしゃっと撫でると、けーちゃんはツンを発動させて不機嫌な顔をして見せる。
「きもい、さわんなオカン」
「くちわるいなぁ」
「きもちわるいのでさわらないでくださいお母さん」
「うわっなんかやだっ」
「お前がくちわるいって言うから丁寧に言っただけだろ」
「ふっ」
笑うと、けーちゃんはなぜか嬉しそうな顔をした。
「……久しぶりに見た、お前が笑ってるとこ」
「いや、いつも笑ってるでしょ」
いつもそばにいるんだから、笑ってるところなんてたくさん見てるでしょ。
「……ちがう」
胸に拳をあてられ、ドクッとした。
「違うだろ」
二度目はさっきより強く言われて戸惑う。
痛いはずないのに、胸がうずうずと苦しい。
なにかが溢れそうになり、大丈夫だと笑って見せた。
そんな顔しないで、けーちゃん。
ごめんね。
これだけは気づかないふりをしていてほしい。
これは俺だけの宝物にするって決めたから。