涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
……ほんとに犬みたい
クラスの皆が言ってたレトリバーって分かんないけど、ぎゅっと抱きしめられるくらいの、おっきい犬……
ぼんやり眺めていると、不意に距離が縮まってドキッとした。
あ……そっか
そういえば隣の席なんだった。
焦げ茶色の髪がふわりと浮いて、すとんと落ち着く。
それに目を奪われていると、偶然こっちを振り向いたりょうたと目が合ってしまった。
ゎっ……
すぐ逸らしたけど、たぶんもう遅い。
「ふっ」
小さく笑われて、わーっと顔が熱くなる。
「……そんなに怖がらなくていいのに」
りょうたはポソっと呟くように言い、それからすっかり静かになった。
そっと視線をやると、もうりょうたは空なんか見ていなかった。
頬杖をついて、窓の外へ目をやっている。
やめようと思うのにどうしてもまた、その横顔を見てしまう。
隣人が眠ってから退屈になった。
先生はなに言ってるのかさっぱり分からないし、黒板に書いてあることもよく分かんないし
ノートにぐるぐる線を書いて暇をつぶす。
はやく終わんないかなぁ、なんて心のなかでぼやいていた時だった。
っっ……!