涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


視界がぐるぐる回って、歪んで暗くなり、目の前のノートは汚れている。

思わず投げ捨てるようにシャーペンから手を離した。

瞬きすると、もうノートは元のきれいな新品の状態に戻っている。



「……っ」



胸に手をあてて、ふぅっと息を吐く。


時々されたことを思い出す。

たとえ向こうは一回きりで覚えてなかったとしても。

されたほうは何度も、何度も。


どうしようもない気持ちになり両手で顔をおおうと、なぜかあれが頭に浮かんできた。



「…………くふっ」



……いや、なんでいま

いみわかんない


頭から追いはらっても、じわじわと頭に浮かんでくるあれ。

りょうたが見せてくれた、人かおばけかも分からない暗闇で光る絵。

手強いそれに、笑いを堪えるので必死になった。


あー……感情忙しいまじやめて




「明日提出物わすれたら即取りに帰ってもらうから、はいさようなら」



……終礼みじけ


クラスメイトがぞろぞろと席を立ち、教室をでていく。

眠そうにしていた先生もすぐにいなくなった。


残ったのは空と……隣の席の……犬


……寝すぎじゃない?

< 41 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop