涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
視界がぐるぐる回って、歪んで暗くなり、目の前のノートは汚れている。
思わず投げ捨てるようにシャーペンから手を離した。
瞬きすると、もうノートは元のきれいな新品の状態に戻っている。
「……っ」
胸に手をあてて、ふぅっと息を吐く。
時々されたことを思い出す。
たとえ向こうは一回きりで覚えてなかったとしても。
されたほうは何度も、何度も。
どうしようもない気持ちになり両手で顔をおおうと、なぜかあれが頭に浮かんできた。
「…………くふっ」
……いや、なんでいま
いみわかんない
頭から追いはらっても、じわじわと頭に浮かんでくるあれ。
りょうたが見せてくれた、人かおばけかも分からない暗闇で光る絵。
手強いそれに、笑いを堪えるので必死になった。
あー……感情忙しいまじやめて
「明日提出物わすれたら即取りに帰ってもらうから、はいさようなら」
……終礼みじけ
クラスメイトがぞろぞろと席を立ち、教室をでていく。
眠そうにしていた先生もすぐにいなくなった。
残ったのは空と……隣の席の……犬
……寝すぎじゃない?