涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


名前は……知らないけど

初めて会ったときから、黒髪にところどころ赤色が混ざってるのが印象的だった。

それをひとつに結んでて、目がきりっとしてて……そう、狐みたいで。

耳にピアスがいっぱいついてる。

先生とは思えない見た目。
制服を着たら高校生と変わらないと思う。

先生は空に気がつくと、にこっとわらった。



「帰らないの?」

「あ……友達待ってて」



まさか話しかけられるとは思ってなかったから、ドキッとした。

先生は空の目の前まで来ると、机の上に腕をのせて、またわらった。



「友達はできた?」

「このクラスに少しは慣れた?」



……全くできる気がしねぇ

むしろ浮きまくってます


さすがにこんなにはっきり言うのはいけない気がして、ちいさく首を横に振る。



「そっか」



励ますような大人の声に、胸がドキッと浮いた感覚になった。


……なに、ドキッとしてんの

相手は先生だよ


やっぱりだめだ。

相手がだれでも、年齢の近い男の人と話すと、変に緊張してドキドキする。

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