涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


……笑った……


彼女がツボなんだろうな。

素敵な関係に頬がゆるみかけてハッとする。


“なにもいらない”


……自分で決めたことは守らないと


気が変わらないうちに、かばんを持って立ちあがる。



「今日助けてくれてありがとう」

「すごい助かった」



意外とすんなり言葉が出た。


最後にせめてこれだけは言いたかった。

だってすごく嬉しかった。

話しかけてくれたこと。

……怖がらずにいてくれたこと。

笑ってくれたこと。

同じ学校の生徒として、ふつうに接してくれたこと。

だから嬉しかった、ありがとう。


なぜか天然ちゃんは泣きそうに笑った。



「ありがとう……っ!」



えっ……

ありがとう、を……ありがとうで返された


ふにゃふにゃ。

そんな可愛い笑顔を向けられたら、冷たくなんてできなくなるじゃん。

もう堪えきれなくて笑ってしまった。



「またねっ」



教室を出る寸前に言われて、渋々後ろを振り返る。

曖昧に頷くことしか、空にはできなかった。


……またね、なんて信じない。

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