涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
必勝
「またあとで」
「うん」
お互いの家の真ん中で、どちらからでもなく手を離す。
家にはいると、そのままお風呂に直行した。
……コンビニ寄らなかったから、今日は奏の料理かなぁ
わしゃわしゃシャンプーをしながら、ふっとにやける。
「はぁぁつかれた」
お風呂を出て、ぼふんとソファに座りこむと、深いため息がでた。
お尻でふんずけていたクッションを抱きしめ、むぎゅっと顔をうずめる。
「……やっぱり転校したくなかった」
ずっと口には出さなかったことを、もごもごとクッションに吐き捨てた。
お母さんがなに考えてるのかまったく分からない。
なにも考えてないんだ、たぶん。
ぜーんぶ仕事だけ。
空のこととか、どうでもいいんだよあの人は。
ーーピンポーン
「あ」
モニターをチェックしに行くと、スウェット姿の奏がうつっている。
ただの部屋着なのに、ファッション雑誌にのってそう、おしゃれ。
あいつなんかムカつくな、よし。
ちょっといじわるしてやろう。