涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
照れ隠しに怒ったふりなんかしてーかわいいなぁ奏くんはー
「ふはっ、あははっ……やめ、やめろぉぉ!」
もう片方の手首もつかまれ、じっと見つめ合う。
なに?にらめっこか?
ぐぃっと顔を寄せると、奏は目を泳がせた。
「空の勝ちーっ」
にらめっこで奏に負けたことないもん。
むかしっからそう。
何回やっても空が勝つの。
……ん?
今なんかいい匂いした。
ふわっとしてて落ち着く、いつもより濃い奏の匂い。
お風呂あがりの優しい匂い。
「いい匂い」
よく見たらまだ髪が濡れてる。
あ、また髪の毛ざつに乾かして来たな。
そっと金色のふわふわに手を伸ばした、その時……
「んっ?!」
手首をつかむ力が、ぐっと強くなった。
ずるずると追い詰められて、背中がひんやり冷たい。
冷蔵庫にピッタリくっついた。
「えっちょっと……やめっ……」
いつもの、くだらないケンカした時みたいに軽く押し返そうとしてもぜんぜんダメで。
……ちょっと……痛い
あ、これが
ーー男の人の力強さなんだ。