涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
「決めただろ……まだ言わない……待つ……まだ我慢……ーー」
奏が小さな声でなにかブツブツ呟いてる。
……決めた……我慢?
「……うしっ俺は自分に勝つ!」
「うわぁっ、びっくりした」
目が合うと、もういつもどおりの奏に戻っている。手首を掴む力も、ふっと弱くなった。
ほっとしていると、奏の人差し指と親指がおでこではじけた。
「……いてて……?」
どんなリアクションをとればいいか分かんなくて、控えめにおでこを抑える。
すると奏は困ったように笑った。
「……俺の勝ち」
そのあと何事もなかったかのようにゲームをし始めた奏の後ろ姿を、じっとにらむ。
勝ちって、なにに?
いまなんか勝負してた?
んで空負けたの?
え、やだ
なにか分かんないけど
「ねぇ勝負だったらデコピンずるいじゃん」
「うっせー……ん、ご飯の前に一戦な」
テレビ画面に目を向けたまま、ずぃっとコントローラーを差し出された。
それを受け取らず、隣に腰かける。