涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
「なにに負けたのか分かんないままヤダ、もっかい勝負しよう」
「うーるせぇー」
「なんの勝負?ねぇなんの勝負してたの?」
しつこいと分かっていながらも聞き続けると、コントローラーを操作していた奏の手がピタリと止まった。
「秘密」
「……ふぅーん」
「負けてもいいって思える時まで勝つ……決めてんだよ」
「……じゃぁ今おしえてもらえる?」
画面に表示されたゲームオーバーの文字。
それを指差すと、奏は「あっ」と悲しそうな顔をしたあと、ハッとしたように「ゲームのことじゃねぇっ」と怒った。
「ふははっ」
よく分かんないけど奏おもしろい。
やけくそでコントローラーを差し出されて、それを笑いながら受け取る。
奏がゲームのステージを選んでいる間、さっき言っていた言葉をぼんやり思い出していた。
そういばあれってどういう意味だったんだろ。
決めたとかまだ我慢とか、自分に勝つーとか。
「……ん?」