涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
急かすように、ポンポンと背中をたたかれてハッとした。
「……青笑(あおえ)空です」
「よろしくお願いします」
息が苦しいくらいドキドキして目が回る。
体の内側から外まで熱が広がって、指先に冷たい汗がにじんだ。
お……落ち着け……大丈夫深呼吸……深呼吸
「……なんかクールだね」
え……
拍手の音をするりと抜けて、小さな話し声が耳に入ってくる。
「いやクールっていうか……」
「……不機嫌じゃね?」
どこからか聞こえてきたその一言で、身体の熱がどこかへ消えてしまった気がした。
また、期待していたのかもしれない。
違う場所へ行けば、もしかしたら何か変わるんじゃないかって。
ーー『あたしこの班イヤでーーす不機嫌な人いるんだもん。空気悪くなる〜〜』
ーー『えっ……と、俺なんか怒らせるようなことした?』
ーー『いつも私達のこと心の中で見下してるんじゃない?』
ダメなのは場所じゃなくて、自分だったのに。
なんで痛いんだろう。
苦しいんだろう。
分かってたことでしょ。
誰にも期待しないって、決めたばっかりじゃーー
「よろしくねーー」