涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
『……?』
だから私はあの時、なんであの子が怒っているのか、分からなかった。
『あたしの名前なんか……覚えてないんでしょう』
なんで泣きそうなのか、分からなかった。
人の気持ちを考えられないくらい、自分のことに必死で。
自分が周りにどう見られてるか、考えるのに必死で。
あの子の目を見ていれば気づけたかもしれない、こんなふつうのこと。
『……篠ノ芽(しののめ)さん……』
『っっ……』
あんなに嬉しかったのに埋もれてしまう。
なんだ、これ……今更気づいたって遅いのに
『笑ったっ!あははっ笑うとかわいーじゃんっ、あたし__!次から名前で呼んでよ』
『……うん』
ーー「……ゆら」
篠ノ芽ゆら、ちゃん。
『先生〜〜あたしこの班イヤでーーす不機嫌な人いるんだもん。空気悪くなる〜〜』
すこし顔を上げれば気づけた。
声が震えていたのは、周りが妙にシンとしていたのは、
『……ごめん』
『っ……思ってもないくせに』
怒ってたんじゃない……泣いてたんだあの子