涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
明らかにひとりだけ大きく違う。
透き通った声に誘われて顔をあげた。
視線一直線のド真ん中。
一番後ろの席なのに、背が高いからよく見える。
背が高いから……じゃないのかもしれない
よくわからない、けど……とにかく
……なんであの人、空に手振ってんだ
は、人違い?
どうしよう、友達と感動の再会を果たしたみたいになってる
……もしかしてあの人と過去に会ったことが……
「あははっリョウタ怖がられてんじゃん!」
……リョウタ……だれ?
知り合いと勘違いするほど、恐らく初対面であるリョウタの雰囲気はとても柔らかかった。
「キシあやまっとけって!ぎゃハハ」
「リョウタでかいから怖いんだよ」
「あはは、犬と猫みてぇ」
「大型犬な、レトリバーとか」
一気に騒がしくなった教室のド真ん中で笑う人。
怖いより、……羨ましいと思った。
誰からも愛される色をしているリョウタが。
眩しくて、びっくりしただけ。
「はいキシ転入生にしっぽ振らないよ〜」
隣から男の声がして見上げると、今日から担任になるであろう先生と目があった。