涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


そうこうしてるうちに、気配はもうすぐそばまで近づいている。

焦って雑に頬をつっついたり、つまんだり、おしたりすると、やっとピクリと眉が動いた。

薄っすらと目が開いたかと思えば、一気に険しい顔になり、バッと肩を抱き寄せ引っ張られて驚く。



「………っ」



まるでスパイのように、散らばる机の後ろに隠れて、外の様子を伺った。

廊下に目をやるりょうたの目は鋭いくせに、ちょっぴり寝ぼけた顔をしているのが面白くて、



「………ふ」

「しー」



堪えきれずに笑ってしまう。

するとりょうたはこっちを向いて、焦ったように笑った。




「ふぅ……行った」



りょうたがホッとした様子で浅く息を吐く。



「そっか、……」



ちっともホッとしない。

抑え込むように、ぎゅっと膝を抱えた。




机の影に隠れたまま静かな時間が流れる。



「……1時間目が終わるまで……」



ふいに聞こえてきた不安げな声に、胸がドッと鳴った。

りょうたのケータイの画面が明るくなり、すぐ暗くなる。

視線を上げると、イタズラをする前の子供みたいな、りょうたと目があって。



「「ふっ」」



ふたりで同時に笑いあった。



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