涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
「なんかちょっとけーちゃんに似てるかも」
「けーちゃん……」
「ほら。黒髪ですっごくイケメンの。永瀬 蛍(ながせ けい)くん」
ああ。あの目つきわるい……
「うん」
「ほたるって書いて、けい」
「間違うと怒るから気をつけて」
「え」
「幼稚園の頃、ほたるちゃんって呼ばれてたんだって」
「俺はかわいいと思うんだけど、本人にとっては人生で一番の黒歴史らしい」
「っっ」
思わず笑ってしまった。
あのクールな感じで、一番の黒歴史がそれって……
「かわいくない?」
りょうたが口を綻ばせながら小首を傾げる。
うん。
「かわいい」
「でしょ!」
りょうたすっごい楽しそう。
だから大して興味はないけどもっと聞いてあげよう。
「あの……もうひとりの子は?」
「ららちゃん?」
「三編みの、笑うと天使みたいな」
「……ららちゃんだ」
りょうたは表情をふにゃりと緩ませて、ほんとうに優しく笑った。
「桜田(さくらだ) ららちゃん」
「さくらだ」
「うんうん」
「ららちゃんはねー、……」