涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
にこっとされて、つい固まってしまう。
「えっ先生まで!!」
リョウタが立ちあがって言うと、教室中が笑いに包まれた。
焦げた茶色の髪、お腹や頬を皆にわしゃわしゃ撫で回されている。
「噛みつくなよ、ほらお手」
「噛まないよっお利口さんだわっ」
それを見た一部の女子はなぜか悲鳴をあげていたり、うっとりとした顔で見ている人もいて……うん、なんかこの先不安しかないわ
「狼……いや、ウルフドッグ」
ーーえ
いまの景色と全く異なる感情。
低音がした方を向くと、鋭い目が教室の真ん中を見据えていた。
その目が空を捉えた時にはもう、狐(キツネ)のようにフッと細くほほえまれて、
さっきより少し強く背中を押された。
「の、隣ね」
「……食べられないように、気をつけて」
最後は空にしか聞こえないくらいの声量で言われて、ストンと教壇の下に落とされる。
先生のその言葉よりもずっと、目が頭に残った。
なるべく周りを見ないように席について、かばんを机の横にかける。