涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


キュルぅぅ



「あ……」



またお腹が鳴ってボッと顔が熱くなる。

まじで泣くよ?



「ふっふははっ、かわいい」



バレてないことを祈っていたら余裕でバレてて、しかもカワイイって……



「ちょ、ほんとに恥ずかしいからお世辞いらない」



カワイイわけあるかいッ!

あんなでっかい音……



「ほんとごめん」

「お世辞じゃないよ」



ほんとにこの男は……どんな時も王子様を崩さない。



「まだ食堂やってないし……抜け出してコンビニでも行こっか?」



りょうたがニカッとイタズラに笑う。

それが奏と重なった。


――『よし、行くかっコンビニ!』


なにもかもが敵に見えたあのとき、奏のすっ飛んだ提案のおかげで心が救われた。

先生にバレて笑い泣きしながら怒られたけど。

あの日ふたりで食べたラーメンはおいしかったなって。


顔を上げると、りょうたは口の端を緩め、見守るようにはにかんでいた。



「ちょっと楽しい思い出し笑い」



堪えずに笑いながら言うと、りょうたは驚いた顔をして、そのあと嬉しそうに笑った。



「えー、どんな?おしえて」

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