涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


「えー……」



少し迷ったあと息を吸う。

そのとき一時間目の終わりを意味するチャイムが鳴った。



「………」



なにかの魔法が溶けたみたい。


――またあそこに戻らなきゃ。

まだ、ずっと。



「ずっとここにいたいね」



言葉にしたのは空じゃない。

隣を向くと、りょうたは困ったように優しく笑っていた。

この人も同じなんだって思うと嬉しくて、寂しくて、胸がキュッとなる。



「うん」



足音や声があちこちから聞こえ始めたころ、りょうたは窓をしめた。




廊下に出るとガラリと空気が変わって足が重たい。

それでも必死で隠した。

りょうたにこれ以上負担をかけたくなかったから。



「青笑さん食堂行ったことある?」



階段をおりながら、りょうたが言った。



「ない」

「玉子丼すっごくおいしいよ」

「……へえ」



キュルル



「った、食べ物の話しないでよっ」

「ふふふっ」



おもしろがられてる。

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