涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


「ぜんっぜんっこわくない」



心配されないように目をキツく開く。

りょうたは驚いたようにポカンとした顔をして、それから堪えきれなくなったかのように「クハッ」と笑った。

見たことない。りょうたのこんな笑い方。

ほんとに身体の奥から湧き上がって止められなかった、みたいな笑み。

嫌ではないけど、ちょっとムカついた。



「なに笑ってんの」

「っわらってっ、ないよ」

「……ばかにしてる?」



怒ってるつもりでも笑けてくる。

りょうたの笑顔ってつられるんだよなぁ。



「いやっまったく馬鹿になんかしてないよっ」

「笑っちゃってるけど」



言いながら廊下に人が増えてきたので、この勢いと流れでドアを開けた。

すごい見られたり、睨まれたりするんだろうなって思ってたけど……

別に特別そうでもない。変わんない、変わってない。


……よし最強


ずけずけと机の隙間を突き抜け、自分の席に堂々と座る。

なぜか大丈夫。

たぶん、きっと、



「間に合ったね」



隣にいてくれた時間があるから。

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