ただ愛してるだけ
慶人君……

そう言った時、彼は少し驚いているようだった。

名前で呼んで、よかったのか。

その答えは、休憩に入って分かった。


彼の姿がみつからなくて、私はキョロキョロと辺りを探し回っていた。

なぜか、彼と一緒にいないと、胸が不安でいっぱいだったのだ。

すると彼は、舞台袖の奥にいた。

「慶人君。」

後ろを振り返った彼は、笑顔で隣を指さした。

『ここに座って。』と言わんばかりの仕草。

私はそれに従うように、彼の隣に座った。


「お疲れ様。歌、よかったわ。」

「本当?よかった。実は、あの曲新曲で、あんまり歌った事がないから、心配だったんだ。」

少し年下っぽさが出た彼。

ああ、そうだ。

彼は私よりも、4歳年下なんだっけ。

それなのに、さっきは励ましてくれて、なんだかどっちが年上なのか、分からないくらい。
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