ただ愛してるだけ
「さあ、帰りましょう。」

律子さんの言葉に、私は彼に背中を向けた。

本当に、来てくれるの?

私は胸に甘い期待を抱いた。


「ね。彼、忙しいって言ってたでしょ。」

「……そうね。」

家に来るって言う事は、律子さんには黙っていた。

「それでも、彼とどうこうなりたいって、思ってるの?」

「それは、分からないわ。」

「そう。じゃあ、まだどうこう言う事じゃないわね。」

律子さんは、安心したように、ハンドルを握った。


彼女の運転にかかれば、家までは10分程で着く。

「お疲れ様。」

「律子さんもお疲れ様。運転、ありがとう。」

車のドアを閉めた後、律子さんがウィンドウを開けた。

「夕陽。彼とどうにかなろうなんて、夢にも思わないでよ。」

「分かってるわ。」
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